コスト・ベネフィット分析とは?

マーケティング

無名ブランドはどうやって有名ブランドに対抗しているのかと考えたことはありませんか?方法はいくつかありますが、そのうちの一つがベネフィットを追加することです。コストとベネフィットを理解して活用すれば、商品の価格を下げることなくサービスの差別化や付加価値を上げることができますよ。

この記事では、コストとベネフィットについて、どういう意味があるのか?どういう使い方をされているのか?無名ブランドの価値を上げる方法と一緒に解説していきます。

起業を考えている。市場がレッドオーシャンで悩んでいる。

高品質なものが多くなった現代

現代は、さまざまなサービスを気軽に受けることができます。たとえば楽天では全国から物を取り寄せることができます。日本にいても海外の商品を受け取れるのは便利ですよね。

ところで、皆さんはネットで商品を買うとき、口コミを見ませんか?中には、口コミがない商品は買わない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?それでは、なぜ、口コミを見てしまうのでしょうか?それは、似た商品がたくさん検索結果に並んでいるからですよね。どれもパット見では違いがわかりません。

現代では、高品質なものがたくさん作られるようになりました。その結果、違いが生まれにくくなってきています。物に限らず、サービスも制度も、ある一定の基準まで高めると差が少なくなります。こういった現象をコモディティ化といいます。

消費する側にとっては、どれを選んでも高品質なものが手に入るのだからありがたいのですが、提供する側にとっては自分を選んでもらえないことは大きな課題です。そのため、コモディティ化が起こっている現代では、商品の差別化や付加価値が重要になってきます。

コストとベネフィット

では、どのようにして商品の差別化や付加価値を上げていけばいいのでしょうか。

それには、コストとベネフィットを考えるのが一つの手です。

コストとベネフィットという言葉は、ふだんから聞く言葉ですよね。コストは、費用という意味で、ベネフィットは便益という意味があります。

なにかを得るときにかかる費用がコスト
なにかを得て得することがベネフィット

人がモノを選ぶのはコスト<ベネフィットであるときといわれています。このため、ベネフィットを数値化してコストと割った数字をB/C(ビーバイシー)と呼び事業計画の指標として用いるほど重要な概念とされています。

コストとベネフィットを考える重要性がわかっていただけたのではないでしょうか。では、実際にコストを減らすには、なにをしたらいいでしょうか?

コストを減らしてベネフィットを上げるには、価格を下げればいい。と、誰しもが思うでしょう。しかし、安易に価格を下げるのはおすすめできません。一度下がった金額を上げると購買意欲が削がれますし、そもそも、その価格である理由があるはずです。

そんなときに考えたいのがお金以外のコストを下げることです。実は、コストにはお金以外にもさまざまなものがあるのです。

お金以外のコストとは?

お金以外でわかりやすいコストの例をあげてみます。

あなたは、ふだん、どんなコーヒーを飲んでいますか?UCCコーヒー、スターバックスコーヒー、はたまた、近所の珈琲専門店でひいてもらった豆・・・・・・。いろいろありますよね。しかし、毎回違う豆を選んで飲んでいる、という方は少ないのではないでしょうか。

自由にコーヒーを選べる時代でも、選ぶコーヒーはだいたい決まっています。

いつも飲むコーヒーが決まっているのはなぜでしょうか。それは、選択するコストがかからないからです。

ものやサービスを購入するとき、人は自分の中にある勘定を用いて意思決定をしています。それは、お金だけではなく、本当にこれを購入していいのか?というメリットや、購入しても困らないか?というデメリットもふくまれます。

今回のコーヒーの場合であれば、ふだんと違うコーヒーを選べばおいしくない確率があります。おいしくないコーヒーを選んでしまったらデメリットです。ふだんのコーヒーならば、間違うことはありません。しかし、代わり映えしないというデメリットがあります。

このようなことを毎回考えるのは、疲れますよね。そのため、わたしたちはいつもどおりを選んでしまうのです。

私たちはふだんから、多くのことを選択しています。コーヒーを選ぶことも、着る服を決めることも、今からなにしようか?と考えることも、一種の選択なのです。

このようなコストを考え、減らすことで、ベネフィットを相対的に上げることができます。

なにをコストに思うかはターゲットによって異なる

購入するかどうかを決めるための意思決定にはコストがかかっていることがわかりました。

ですが、このようなコストを、コストと感じるかどうかは人によって違います。どの商品がより得するのかを考えることが楽しい人もいるからです。

ですので、ターゲットがなにを考え、なにを求めているのかをよく考えることが重要になってきます。自分たちの商品が、どういう層をターゲットにしているのか。そのターゲットが、商品に求めていることは何なのか。そこをしっかり把握しておかないと、間違ったマーケティング戦略になってしまいます。

間違ったマーケティングをした例

間違ったマーケティングをして失敗した有名な例は、マクドナルドがあります。マクドナルドは日本上陸した当初、高級品として打ち出していました。当時は、ハンバーガーはめずらしい食べ物でもあったので、マクドナルドで食事をするというブランド感がありました。このためスマートなサラリーマンやOLが食べるところ、として人気を博しました。しかし、駅前に店舗をかまえていたため、より多くの層を手に入れる必要がマクドナルドにはありました。マクドナルドは価格を下げてセールを行いました。その結果、家族連れや学生が多く訪れることとなりました。すると店内はにぎやかになり、それまで好んでマクドナルドに通っていた顧客は来なくなってしまいました。セールや物珍しさで来る人はすぐにいなくなってしまいます。ファンほど根強い味方はいません。マクドナルドは、すぐに高級路線へ戻しました。しかし、一度離れたファンはなかなか戻るものではありません。また、安くなったと思って買いに来た顧客層は、値上がりに反対もしました。時代の波もあってマクドナルドは安いファーストフード店としてやっていくしかなくなってしまいました。現代になってもマクドナルドは高級路線へ戻そうと高めのハンバーガーを出していますが、成功していません。このように、マーケティングを間違えると大変なことになってしまいます。

価格を下げずにマーケティングに成功した例

反対に、価格を下げずにマーケティングで成功した企業もいます。

うまくマーケティングした例が、モスバーガーです。

モスバーガーが市場に出てきたころには、日本にはマクドナルドがハンバーガーシェアの大多数を占めていました。アメリカから輸入されたマクドナルドと比べ、モスバーガーは1からの創業です。すでに安価でおいしいハンバーガーショップがある中での販売は難しいと思われていました。

しかし、モスバーガーは独自路線を打ち出すことでマクドナルドとの差別化をはかることに決めます。最初は日本発祥のハンバーガーという点でした。でも、それだけではターゲットは満足しません。差別化するには、自社の強みとターゲットが求めていることの中から行なわなくてはなりませんでした。そこでモスバーガーは、日本発祥のハンバーガーであることにくわえ、フレッシュな野菜を使った高級志向なハンバーガーで打ち出すことに決めました。

顔の見える農家戦略で、自分たちが食べる野菜がどこから来るのかわかるようにし、安心と地域密着感を与えました。

高級志向なので、あえて郊外の立地を選ぶことで、リラックスした雰囲気でハンバーガーを食べれるようにしました。

そう、ちょうど、マクドナルドから離れていった層の好みに一致しているのです。

ハンバーガーは好きだけど、健康が気になる、騒がしい雰囲気が気になる、というターゲットにうまくフィットしたモスバーガーは、マクドナルドに並ぶ有名なハンバーガーメーカーになったのです。

コストの種類

価格を下げて認知をはかることは一見すると有効な手段に思えるかもしれません。ですが、一度下げた価格はもとに戻しにくいという問題があります。

そのため、価格を下げるのは最後の手段にし、まずは下げられるコストを下げる方策があります。

では次に、どのようなコストがあるのかを知っていきましょう。

①金銭的コスト

商品を手に入れるために支払われる代価。一番わかりやすいコスト。

新車は300万円かあ。高い。

②時間的コスト

購入するのに時間がかかるものや、購入してもすぐに手に入らないもの

納車は半年先、と。

③肉体的コスト

購入するために、出向いたり重たい荷物を持って家に帰るときにかかるもの

ショールームの車を眺めるの楽しかったけど、歩いてすこし疲れたなあ

④エネルギーコスト

道に迷うことや、商品の説明を読むときにつかうもの

必要なのはわかっているけど、説明読むのめんどうだなあ

⑤心理コスト

新しい商品を購入するときや、評価が良くない商品を購入するときにかかるもの

この車、最新のものでまだレビューないけど大丈夫かな?

ひとつひとつくわしくみていきましょう。

金銭的コストをくわしくいうと

金銭的コストは一番わかりやすいコストですよね。

商品を手に入れるためには代価を支払う必要があり、現代でそれはもっぱら金銭で行われています。私達が持っている資金は有限です。

毎月の生活費はいくら、貯金はいくら、なのでお小遣いはいくら…。と、大体の数字を決めている家庭がほとんどではないでしょうか。予算の中でやりくりしなくてはならないので、買いたいもののなかから一番いいものを選ばなくてはなりません。

また、どれだけほしかったものであっても、金銭を払うのはすくなからず心理的に抵抗が生まれます。

そこで私達は、これがどれだけ必要なもので、どれだけ自分にメリットがあるのかを確認し、受け入れようとします。つまり、買っていいんだ!と思い込もうとするんですね。このような心理の働きを選択指示バイアスと呼びます。

選択指示バイアスを強めるために、商品の利用価値が丁寧に書かれた説明書や高いレビューを用意することが購入の後押しに必要なこともあります。また、購入してよかった、という感覚を味わってもらうために、パッケージデザインをかわいくしてシェアさせるように働きかけるのも有効な手です。

時間的コストをくわしくいうと

現代人はとにかく時間がありません。仕事や学校から帰ってきたら、家事をしたり宿題をやったりと、毎日やることが山積みです。その合間を縫って、自分の好きなことをやります。なので、無駄なコストは極力削減したいと考えています。ですので、無駄な時間がかかることはやりたくありません。ただ、なにが無駄であるのかは人によって違います。

コーヒーをとにかく早く飲みたいと考えている人は、ある意味、どんなコーヒーでもかまわないと考えているはずです。そんなときに懇切丁寧にコーヒーの商品説明をされても無駄に感じることでしょう。ですが、コーヒーの1つ1つのことを大切に考えていて、商品説明を聞くのも好きだという方は、そんな時間がかけがえのないものになるはずです。

このように人によって違いがあるので、自分たちのターゲットがなにに価値を感じ、なにを無駄と感じるのかを考えるのも商品価値を上げるためには大切なことです。

肉体的コストをくわしくいうと

肉体的コストもわかりやすいコストで、商品を買うために使われる肉体疲労をあらわします。店舗にしか置いていない商品を見るために出歩くことや、重たい荷物を持って歩くことは、肉体的コストがかかるもの、として認識されます。

肉体的コストを考える時に重視したいのが、ターゲットの属性です。

ターゲットが高齢者の場合、とくに肉体的コストのかかるものは敬遠される傾向にあります。駅から店舗が離れているのに駐車場がない場合も肉体的コストがかかると認識されます。

肉体的コストを軽減するには、店舗の導線を改善したり、荷物配送サービスをつけたりするといいでしょう。費用の問題でこれらができないときは、ほかのコストを削減するようにしましょう。レジで並ぶ時間が短くなれば、重たい荷物を持ち歩く時間が短くなり、結果的に肉体的コストも下げることができます。

エネルギーコストをくわしくいうと

エネルギーコストは、後述の心理コストに近いコストです。主に、脳にかかるコストをエネルギーコストといいます。心理コストは、人間の心理メカニズムに応じたコストであるので、人によってコストのかかり具合が違います。ですが、エネルギーコストは人間の脳が感じるコストなので、人によるばらつきが少なくなります。簡単にいいますと、頭が疲れるものかどうかです。たとえば、勉強するのには脳のエネルギーを使う必要がありますよね。ほかにも、煩雑な会計処理が必要なものは疲れてしまうので敬遠されがちです。

エネルギーコストを削減するには、誰でも使いやすいフォーマットを用意する、簡単な処理で問い合わせや会計が行えるようにすることなどがあげられます。

心理コストをくわしくいうと

心理コストにはさまざまなものがあります。代表的なものはスイッチングコストです。

人間は、新しいものを試すことに抵抗を感じる性質があります。新しいものは試してみたいけど、失敗するかも知れないし、もしかしたら嫌な思いをするかもしれないから、いつものものにしよう。と考えるわけです。なので、新しいものを選ぶときは、自覚が合っても自覚がなくても、心のなかで本当にこれでいいのか?と考えるコストが発生しています。このことを、マーケティング用語ではスイッチングコストと呼びます。新しいものをえらぶときに生じるコストがあることを知っておけば、うまく利用することができます。

ベネフィットがコストより勝るとき商品を買う

無名ブランドが価格以外で有名ブランドに打ち勝つには、

①ターゲットが求めていることを調べること

②ターゲットがほしいものを的確に出すこと=ベネフィット

③誰でもわかりやすく簡単に終わるようにすること

➃コストを下げること

です。

コストは、ターゲットによって異なるということを今回の記事で説明させていただきました。自分たちのターゲットがなにを求め、なににコストをはかっているのかを知ることができれば、ベネフィットを上げることができます。この記事を参考にして、自社の分析をしてみましょう。

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