バターが足りない…!だけどお菓子作りがしたい!そんなときにおすすめなのがオリーブオイルで作るマドレーヌです。バターをたっぷり使うイメージのマドレーヌですが、実はオリーブオイルでも作れますよ。それもバターだけで作るより膨らみやすくなりますし、軽やかでおいしいです。この記事では、なぜマドレーヌをオリーブオイルで作れる科学的な面からの解説と、フランスのCARL MARLETTIさんのレシピを使ってオリーブオイルのマドレーヌを作ってみた感想を、製菓アドバイザーがわかりやすく説明しています。
オリーブオイルで作るマドレーヌのレシピを知りたい方はこちら。
マドレーヌのバターの役割、オリーブオイルをつかうとどうなるのか、気泡の有無で変わること、寝かせたときの違い
マドレーヌにオリーブオイル?
オリーブオイルといえば健康的なオイルの代名詞ですよね。普段の生活でも、オリーブオイルをサラダや揚げ油に使っているご家庭も多いのではないでしょうか。そんなオリーブオイルを使ってお菓子を作れたら健康的だなって思いますよね。
オリーブオイルを使ったお菓子はいろいろとあるのですが、マドレーヌがオリーブオイルで作れるのは知らない人が多いハズ。
ケークサレやビスケットのような塩味もするお菓子に使うならおいしくなるのも納得ですが、甘いお菓子にオリーブオイルを入れるなんて合うかびっくりですよね。
しかし、オリーブオイルでマドレーヌを作るのは健康効果だけではなくおいしく作れるという理由があるんです。
マドレーヌをオリーブオイルで作れると知ったきっかけ
オリーブオイルでマドレーヌが作れることを知ったのは、パリの人気店が公開!シンプルを磨く、フランス焼き菓子レシピからです。
この本ではパリの第一線で活躍するパティシエたちのレシピが公開されています。わたしお気に入りのレシピ本で、どのレシピも本当においしいです。シンプルな焼き菓子のコツが余すことなく書いてあります。
そんなレシピの中の1つで、特に異彩を放っていたのがオリーブオイルで作るマドレーヌでした。
オリーブオイルで作るマドレーヌのレシピ作成者はCARL MARLETTIで、フランスのパティシエです。お菓子といえばフランスですから、この時点で絶対おいしいんですが
CARL MARLETTI 氏はレモンタルトのコンテストで優勝をおさめた他、日本のコルドンブルーで講師を勤めたこともある凄腕のパティシエなのです。
パリの有名な焼き菓子で検索すると名前が出てくるような有名なパティシエさんですよ
そんなCARL MARLETTI氏が考えた最高のマドレーヌはオリーブオイルを少し入れるということ。
理由は、オリーブオイルとかんきつ系の蜂蜜をいれることで軽やかになり爽やかな風味が楽しめるようになるから。ということでした。
わたしは製菓アドバイザーの端くれなので、いったいどうしておいしくなるのか理解できないと他人におすすめなんてできません。ですので、実際に作って検証してみました。
オリーブオイルでマドレーヌを作るとおいしい理由
その前に、まずは科学的な考察からです。
さっぱりした仕上がりになる
マドレーヌの基本レシピには、バターがたっぷり入っています。下の記事をお読みになればわかりますが、卵や小麦粉と同じくらい入っています。
マドレーヌは砂糖も油脂の含有量も多く、どっしりとしがちなお菓子です。そこで一部をオリーブオイルに置き換えることであっさりとした風味を楽しめるようになります。マドレーヌにはレモンなどのかんきつの皮を生地に入れたりしますが、それもどっしりするのを避けるために行っていることなんですよ。
ですので、かんきつ類の皮を入れなくても作れますし、どのかんきつ類を使うかも自由ですよ。
オリーブオイルを使うことで様々な風味を表現できる
オリーブオイルは品種や産地、絞り方や生産者で香りが変わります。
香りは、若い実で積んだグリーンタイプと、熟した実を使ったライプの二種類があります。その中でも軽い香り、強い香り…といった風に違いをタイプとしてわけています。
オリーブオイルの香りには他にも、ナッツのような香り…早熟のバナナの香り、摘み立てのトマトの香り…といった様々な表現がされるほど品種や製法で風味が変わります。
あまりにも奥が深すぎて、このページだけでは紹介しきれませんね
このサイトのように、一言では説明できない風味がオリーブオイルにはあります。
ですので、使うオリーブオイルをわけることで様々な風味を楽しむことができるようになるのです。
レシピにはさらにオリーブオイルも細かな指定がありましたが日本では見つけられず…。近いものをピックアップしておきますね。気になった方はチェックしてみてください。
膨らみやすくなる
マドレーヌはオリーブオイルのような植物油で作ると、バターで作ったときより膨らみやすくなります。
お菓子が膨らむ理由は、中に気泡があり、その気泡を支える骨格が存在しているからです。
少しむずかしい話ですが、オリーブオイルのような植物油にはこの気泡を作りやすくする効果があります。理由は2つで、オリーブオイルはグルテンのつながりを弱くする力と、温度で形が変わらない特性があるからです。
(いずれ詳しく解説した記事を作る予定ですが)簡単に言いますとオリーブオイルは生地に溶け込みやすい性質があります。
オリーブオイルのような液状の油は、泡立て器でいくら泡立ててもバターのように膨らむことがありません。常温でも液状のままの油は、生地の温度が冷えても同じ形状を保ちます。バターを使うと冷やすときにバター成分だけ固形化してしまいます。オーブンで焼くと元通り溶けるのですが、どうしても膨らみを阻害しやすくなります。このため、膨らむことが重要なシフォンケーキではサラダ油を入れるようになっています。
実際に作ってみた
これまでの調べで、マドレーヌはオリーブオイルでもおいしく作れることが分かりました。しかし論よりも証拠。作って美味しくなくては人におすすめできません。なので実際に作ってみました。
今回行ったこと
- 工程は忠実に守り作りました。
- フランス産の小麦粉、香り高いオリーブオイル、オレンジのはちみつの3種を、日清スーパーバイオレット、スーパーで売っているエクストラバージンオイル、はちみつにオレンジ汁を5g混ぜたもので代用しました。
- 材料は全て半減して作りました。
- マドレーヌの型も無かったのでリーフ型を代用しました。
感想
見た目
これがそのマドレーヌです。
かなり膨らんでいます。
今回の型はリーフ型という浅い型なうえ、真ん中の凹みがないため膨らむのは難しいのではと思っていましたが、寝かせる時間をなくしてもきちんと膨らみました。なんなら紙のマドレーヌ型でも膨らみました。私ベーキングパウダー入れすぎてなかったよね??と再確認するほど。なるほど、これがオリーブオイルの力…。
ふつう、マドレーヌは冷やしたり金属製の型で焼いたりなど、こまかな工夫をして綺麗に焼き上げることができます。レシピにもそうするように記述されていたのですが、私はあまりにおなかが空いたので半分はそうやって作ってしまいました。
ここで断面の違いについて見てみましょう。
こちらがオリーブオイルを入れて作ったマドレーヌ。
こちらはバターだけで作ったマドレーヌです。
まったく断面の様子が違いますよね。ベーキングパウダーで作る気泡は縦にできるのが特徴です。バターで作ったときよりもオリーブオイルを入れたほうがベーキングパウダーの効果が発揮されているのが分かります。なぜベーキングパウダーの効果がオリーブオイルの方が強く出るのか、その科学的根拠は調べている途中ですが、プロの中では植物油はグルテンのつなぎを柔らかくする効果があり、気泡を作りやすくしてくれるとして有名です。
逆に、バターはグルテンの結びつきをばらばらにするため、脆い食感を生み出すことができると言われています。
これらの特徴を生かしてお菓子作りをすれば、ステップアップができそうですね。
感想
カールマルレッティのオリーブオイルで作ったマドレーヌは、外はサクッと、中はふんわりしっとりしていることが分かりました。外がさっくりしているのは、型に塗る油と金属型を使ったおかげです。レシピでは、型の種類もこのように指定されています。他にも細かなコツが載っていますので、レシピが気になった方はぜひ読んで作ってみてください。
口溶けはとてもよく、軽いです。一部をオリーブオイルに代替するレシピなので一応バターも含まれているのですが、バターより明らかにオリーブオイルの風味が香ります。品質の良いオリーブオイルを使って作っていただきたいです。私の作ったものでは、オレンジの香りはどこかへと消え去りました。オレンジのはちみつが用意できなければ、オレンジの絞り汁よりオレンジの皮を入れたほうが柑橘を味わえると思います。私は、バターの味をもう少し前面に出し、オレンジを強調するレシピに作り替えてみようと思います。
最後に
普段食べるマドレーヌとはまた違った味や食感になって作っていてとても楽しかったです。私はオリーブオイルの味がすると思いましたが、知人に何も言わずに食べてもらい実はオリーブオイルを使って作ったことを話すと大変驚いていたので、気にするほどではないかもしれません。柑橘のはちみつを持っている人、おいしいオリーブオイルを持っている人に、ぜひ試してみてほしいマドレーヌでした。
今回使ったレシピ本
パリの人気店が公開!シンプルを磨く、フランス焼き菓子レシピー伊藤 文ー
パティシエ
CARL MARLETTI