マドレーヌは、お菓子作り初心者の方にオススメの焼き菓子です。マドレーヌは混ぜて焼くだけで作れて失敗もほとんどありません。そんなマドレーヌですが、ひと工夫くわえることでさらにおいしいマドレーヌにすることができます。製菓アドバイザーが、マドレーヌのおいしい作り方と、科学でわかるコツをお伝えします。
マドレーヌの基本材料、マドレーヌの製法別特徴、気泡ができる理由、グルテンの役割、おすすめのレシピ本
マドレーヌは初心者でも簡単に作れる
マドレーヌは材料を混ぜて焼くだけで作れるフランスの焼き菓子です。
お菓子作りにありがちな、混ぜすぎによる失敗や、泡立て加減を見極める必要はありません。
卵・砂糖・小麦粉・ベーキングパウダー・はちみつ・バターを順序よく混ぜて焼けば完成。
手軽にできるのに、味は一級品。フランスでは、かならずパティスリー(ケーキ屋)に置いてあると言われるほど人気なお菓子です。
そんなマドレーヌは、ある工夫をくわえると、さらにおいしく作ることができます。1つ1つ、その理由を解説していきますね。
マドレーヌのレシピの流れ
バターを溶かす
↓
卵に砂糖類→粉類→水分→(柑橘類の皮などアレンジ材料)→油分の順番に材料を加えながら混ぜる
↓
生地を休ませる
↓
高温・短時間で焼く
マドレーヌをもっとおいしくする方法
- 油を使い分けて味を変える
- しっとりしたマドレーヌは砂糖が大切
- よく混ぜてふわふわのマドレーヌに
- しっかり休ませる
- 金属製の型を使えばツヤツヤのマドレーヌに
- 粗熱が取れたらしっかり包装する
油の使い分けが大切
マドレーヌには溶かしバターを必ず加えます。このバターは、しっとりさせるためと、香りをつけるために入れるものです。入れるバターは、溶かしバターであったり焦がしバターであったりとさまざまです。お菓子は香りが変わるだけで味もかなり変わってきます。プロは、それを理解して自分好みの味になるように入れる油を使い分けています。その中でも、発酵バターをくわえるとバターの芳醇な旨味と爽やかな香りを楽しめるようになるので、オススメです。
他にも、この記事にあるように、オリーブオイルを入れるのもオススメです。焼き菓子に植物油を入れると軽い食感になり膨らみやすくなります。
バターは常温になると固形になる性質を持っており、これは調理したあとも変わりません。なので、バターがたくさん入っているお菓子や料理は、冷めるとパサパサした食感になってしまいます。それに、どっしりした食感になってしまうこともあります。
軽やかな食感が好きな方はバターの一部をオリーブオイルなどの植物油に置き換えてみてください。
私はいつもオリーブオイルを少し入れて作っています。
しっとりしたマドレーヌにする方法
しっとりしたマドレーヌにしたいときは、砂糖をしっかりいれるようにしてください。
本来マドレーヌは、焼き立てはしっとりしたものになります。その理由は、生地に入っている砂糖にあります。マドレーヌには、卵と同じくらいの量の砂糖が入っています。スケールで量ると想像以上の量だと思いますが、この砂糖が大事な働きをしています。砂糖には保水性があり、生地の水分を保つ働きがあるのです。なので、レシピに書いてある量より砂糖を減らしてしまうと、本来保てるはずだった水分が少なくなり焼き上がりがパサパサしたマドレーヌになってしまうのです。レシピの通りに作るか、砂糖が極端に少ないレシピで作らないようにすれば、しっとりしたマドレーヌが作れるはずです。他にも、はちみつや水あめを入れることや、一部を植物油に変えることでもしっとりした生地にすることができます。
ふわふわのマドレーヌにする方法
マドレーヌは、ジェノワーズ(スポンジケーキ)を作るときのように泡立てて作ると、ふわふわしたマドレーヌにすることができます。
マドレーヌは混ぜるだけで作れる有能なお菓子ですが、あまりに混ぜるのが足りないと、グルテンが足りなくなったり、砂糖が溶け切らないという問題が起きてしまいます。特に、最初の砂糖と卵を混ぜるタイミングでもたもたしてしまうと砂糖がダマになってしまいます。こうなると、砂糖と卵が分離した状態で生地ができてしまい、膨らみを阻害し、妙に卵くさいマドレーヌになってしまいます。
これを防ぐために、しっかりと泡立てながら混ぜると、なめらかで口溶けのいい、ふわふわのマドレーヌにすることができます。
しっかり休ませることで膨らみやすくなる
マドレーヌは生地を焼く前に冷やす工程がありますが、これはベーキングパウダーを働きやすくするためです。
マドレーヌのレシピは、卵に溶かしバターを入れて作ります。卵を泡立てることもバターを泡立てることもしません。それでもマドレーヌは膨らむのです。それは、マドレーヌにあるベーキングパウダーのおかげ。
ベーキングパウダーは炭酸水素ナトリウム、酸性剤、遮断剤でできています。ベーキングパウダーは水と熱が加わることで反応が起き二酸化炭素を発生させます。この性質を使い、生地に含まれた水とオーブンの熱でベーキングパウダーの反応を起こさせ膨らませているのです。
しかし、ただ二酸化炭素の反応が起きるだけでは生地は膨らみません。ある程度まで膨らんだら、生地の弱いところから空気が抜けていってしまうからです。
それを防ぐために、生地にグルテンや卵を入れて、気泡をぎゅっと抱いたまま焼き固まらせます。
こうすることで、膨らんだあとも形を維持してくれるのです。
このように、ベーキングパウダーをうまく使うには、ある程度のグルテンがいるのですが、グルテンがたくさんあるのも膨らみが悪くなる原因になります。
そのため、生地を休ませてグルテンの働きを抑えます。
両方が一番うまく働く時間は3時間と言われています。これを冷蔵庫で休める時間の目安にしてください。
この間に大きな気泡は消えてなくなります。このように聞けば、さきほどお話した、ジェノワーズのように泡立てる意味がないのでは、と思われると思います。
しかし、大きな気泡は消えますが、きめ細かく作った泡自体がまったく消えてしまうということはありません。
実際、実験してみると、しっかり泡立てて作ったマドレーヌの生地は冷やしたあともスプーンでサクッとすくえるくらい軽い生地になります。
本来の作り方をしたマドレーヌの生地は、キャラメルのようにネットリしていますので、かなりの違いが起きているということがわかると思います。
ちなみに、サクッとすくえるくらいの生地にすると、焼いた時にマドレーヌのへそはあまり出なくなります。味に違いはありませんが、好みが分かれてくるところなので、ぜひ使い分けてみてくださいね。
つやつやのマドレーヌにする方法
マドレーヌを焼くときは金属製の型を使ってください。
金属製の型は熱どおりがよく、マドレーヌの周辺生地はすぐに火が通って固まります。このおかげで内側に火が通るのが遅くなり、爆発したように膨らませることができます。つまりマドレーヌのへそができやすくなるのです。
また、生地の接する部分がかなりの高温になるため、溶かしバターを塗ってから焼くとまるで外側だけ揚げたかのようにカリっとした食感にすることができます。
このおかげでマドレーヌの特徴的な模様をはっきりと映すことも可能になります。
金属製の型は少し管理が難しいですが、シリコンや紙で焼いたときとは全然食感が違うので、ぜひ試してみてください。
【関連記事】型の違いと保管方法
私はもう前までの型には戻れないです。また、焼く時も、予熱の時にしっかりと天板を温めてから焼くようにしましょう。
天板を入れたまま予熱することで、型に火が回りやすくなりさらに膨らみやすくなります。
焼いたらしっかりと包装してパサパサを防ぐ
焼き立ては理想の焼き上がり!
ですが、時間とともにしっとり感がなくなり、ぱさぱさしてしまう・・・。
マドレーヌに限らず、バターが多い焼き菓子には常にそんな問題がつきまといます。
同じような材料を使って作るパウンドケーキは、しっとりしていることが多いですよね。
ですが、よくよく思い出してみてください。パウンドケーキには洋酒が材料に入っていることが多いことを。
パウンドケーキを一度作ったことがアル方はご存知かもしれませんが、パウンドケーキは焼き上がってすぐに洋酒を染み込ませる工程があります。
お酒の代わりにアイシングをかけるときもありますが、どちらも、パウンドケーキの水分を保つために行うことです。
マドレーヌにはこの工程がありません。なので、どうしても時間とともにパサパサするようになります。
これは保存の仕方を変えることである程度は防ぐことができます。
マドレーヌを焼いた後、粗熱がとれたらきちんとラップや包装紙で包んでください。常温でそのまま放置してしまうと水分が抜けてしまいぱさぱさした食感になってしまうのです。
それでも、ぱさぱさしてしまうことがあるマドレーヌ。
そんなぱさぱさマドレーヌを復活させる方法があります。
それは、水分を含ませたキッチンペーパーをマドレーヌが入っている袋に入れて密封することです。つまり加湿してしっとりした風味を取り戻すんですね。
これでも足りない時は、水をしめらせたキッチンペーパーにマドレーヌを包んでレンジで20秒チンします。
これは非常時の方法なので、まずは焼いた後に放置しすぎないように気を付けてみましょう。
マドレーヌの基本レシピ
マドレーヌ 15個分
材料
無塩バター120g
全卵70g
グラニュー糖70g
はちみつ15g
小麦粉100g
ベーキングパウダー5g
牛乳40ml
オリーブオイル15ml
焦がしバターを作る。鍋にバターを入れて火にかけながら泡だて器で混ぜ溶かす。色が濃くなってきたら火を止めて、シノワ(こしきに布巾で代用もできます)でこす。
小麦粉とベーキングパウダーはあわせてふるう。
1.ボウルに、全卵を割り入れ軽くときほぐす。砂糖を入れすぐにハンドミキサーで混ぜる。白っぽくなったらはちみつを加える。ふわふわにさせたいなら、泡立て器ですくって落とした時にリボン状になるまで混ぜる。
2.粉類を入れる。粉が見えなくなるまで混ぜる。
3.牛乳、オリーブオイル、焦がしバターの順番で入れながら混ぜ合わせる。艶が出たら混ぜるのは終了。
4.絞り袋に入れて冷蔵庫で3時間冷やす。
5.天板を入れてオーブンを190℃に予熱する。型にバターを薄く塗る。
6.型の8分目まで生地を入れる。190℃のオーブンで10分焼き、170℃で3分焼く。
7.焼き上がったらすぐにオーブンから取り出し、軽く型を台にたたきつけて生地を取り外す。
おすすめのレシピ本
最後に、マドレーヌの作り方が詳しく載っているレシピ本を紹介します。
最近パリではマドレーヌの中にクリームを入れるマドフィナが流行っているようです。こちらの本では、そんなクリーム入りのマドレーヌだけではなく、果物を乗せてケーキのように仕上げるフィナンシェや、料理感覚で楽しめるサレバージョンのマドフィナを紹介しています。
マドフィナとは、マドレーヌとフィナンシェのこと。両者は材料が似ており、一緒に作られることが多いことから業界ではひとくくりで呼ばれることが多いです。
とくにおすすめな理由は、写真をふんだんに使って作り方を丁寧に教えているからです。製作過程ひとつに複数の写真を使って教えてくれますからイメージがしやすいです。膨らまなかった場合はどの工程で何をしたらいいのか、といった一口メモも添えてあるので、作者の製作愛を感じることができました。
お菓子作りには道具によって出来上がりに差が出ます。とくに焼き菓子は使う型が重要になります。レシピを再現するには、どんな型を使っているかを見たほうが良いのですが、このレシピ本では冒頭に使っている型も材料も紹介しているため、レシピを再現しやすくなっています。
味のアレンジも豊富ですが、レシピひとつひとつで砂糖の分量を変えたりと工夫も凝らされていて、意図を考えたい私のような人には特に楽しめるレシピ本でした。
こちらの本を使って実際に作ったマドレーヌがこちらです。
果物バージョンのマドレーヌも作ってみました。アイシングをするとさらにおしゃれになります。果物を入れて作ると一部が焦げたり生地の水分量が変わって膨らまなくなったりしがちなのですが、対策方法もレシピには載っていました。
マドレーヌ作りにはとてもいいレシピ本なので、マドレーヌを作りたいと思った方はぜひ手にとってみてください。